八ヶ岳に来てからは、毎日のように「いいねえ」、「いいわねえ」と言っています。八ヶ岳スタイル13号
野鳥や木々も研究の対象に
「ご主人は富山大学時代には物理学の教授をされていた。自然や生物、宇宙の原点である原子を毎日顕微鏡で覗くのが仕事だったという。北アルプスの氷河を対象に、積雪や泡雪崩(ほうなだれ)を観測する雪氷学の分野でも多くの経験を積んできた。
「ここに来てからは、鳥や草木の観察が毎日の日課になっていますよ。庭には富山から持って来た木々の苗木を植えて、八ヶ岳の気候に合うかどうか観察の毎日。もちろん野菜づくりにも挑戦し、昨年はジャガイモや葉もの野菜もたくさん収穫できました。」
一方、奥様は、「できるだけ散歩するようにしているんです。1万歩を目標にね。だから二人ともすごく健康になりました。3年前の人間ドックの時から、ずいぶん数値が改善されました。それに、秋になると山栗がたくさん落ちているんですよ。誰も拾わないのね。だから縄文人なんて言われながらたくさん拾って来て、山栗でも煮て食べれば美味しくいただけますよ。」
岡部さんの西側の隣地が自然林の雑木林になっている。そのため、特に冬になるとたくさんの種類の野鳥が集まってくる。
「最初はそんなに分からなかったんですけど、見ていると種類が増えてきているのが分かるんですよ。そうすると調べるでしょ。そして写真も撮りたくなる。性格なんですかね。それと、窓からの借景もいいんですよ。唐松の倒木もあるんですけど、これもね、最初はちょっと気になりましたけど、それも自然なんだなって思えるようになってきました。窓から見える雑木林の表情も季節によって変わるし、ただただそれを見ているだけでも気持ちがいいんです。」
ご主人の指定席でもあるリビングのソファに座ると、富士山と南アルプスの両方の山が見えるだけでなく、隣地の雑木林もすぐ身近に見える。冬になると野鳥が集まり、夏には木々の緑が風に揺れ、木立の向こうには山々が望める。そんなロケーションがもたらしてくれる気候風土は、初めての土地というハンデも気になることはないくらいの大きな魅力なの
窓からの景色を眺めながら音楽を聴く至福のひと時
「このエリアには図書館、美術館などがたくさんあるんですよ。私はクラシック音楽を聴くのが好きなんですけど、図書館に行けば無料で貸してくれるでしょ。」
ご主人の部屋は2階のロフトにあたるオープンスペースで、屋根裏の趣味の隠れ部屋のようになっている。BOSEのCDプレーヤーとスピーカーの愛機が真ん中に置かれ、窓からは南アルプスを眺め、好きな音楽を聴いているだけで、自分だけの素敵なひと時に浸ることができる。
「二人が基本ですからね、そんなに大きい家は必要なかったんですよ。娘と孫が来た時も和室に泊まれますから。」
「ロフトを主人の部屋にして、納戸を私の部屋にしているんですけど、ちょうどいいんです、このくらいのサイズで。富山の家は大きくて、冬なんか廊下に出るだけで寒いでしょ。まさにヒートショックの大きな家でね、それに比べたら本当に快適ですよ、ここは。」
光熱費も富山の時より安いくらい
初めての冬を越してみて分かったことは、意外に少ない光熱費。キッチンはIHにして、ガス設備はなし。暖房はリビングに置いてある石油ファンヒーターの1台だけで家中が暖まる。夏はクーラーもいらないので、1年間の電気代はほとんど変わらないと言う。富山ではガス代と暖房費で月に2万円程だったが、暖房とお風呂に使う灯油は冬でも月に1万円くらいで、夏は3千円ほど。光熱費は今の家の方が安いくらいだ。
「京都にいる友人が古民家を再生した家に住んでいるんですけど、驚いていましたよ。古い家は光熱費がかかるって。」
2階のご主人のロフト部屋は吹抜けになっていて、奥様用の納戸兼用のお部屋はドアが付いているが、1階のヒーターだけで真冬でも充分温かいと言う。
「真冬でも、朝起きた時12~13℃くらいですからね、2階は暖房は不要ですよ。」
現在、2回目の冬を過ごし、春になったら富山から移植した木々の枝が新芽を芽吹くか楽しみに待ちながら、退屈することなく、毎日を気楽に暮らせる喜びを満喫していらっしゃいます。
(この記事は2011年のインタビューです)