30年かけて少しずつ、少しずつ、夢のカタチに近づけて。八ヶ岳スタイル16号
そして、ホンカログの新築、自然エネルギーも活用した住まい方へ。
その後ご主人が亡くなり、奥様は定年で退職。1年のうち半分は八ヶ岳で暮らそうと決めた渡邉さんは、平成20年に中古の別荘を売却し、現在のホンカログホームを星の音ヴィラヴィレッジに新築。
「母親もここに来るのが好きですからね。ここで花を植えたり、果物の木を植えたり、野菜を作ったり。そんなことをするだけで充分幸せを実感できます。それを、もう少し自分たちだけのものにしたかったので、思い切って買い替えました。この歳になって買い替えるのも大変なんですけどね、それまで節税の恩恵に預かってきたし、まあいいかって。これもオンナの勘です。」
150坪の敷地には、平屋のホンカログが建ち、ご自宅のお庭には野菜畑と花畑があり、敷地の周囲に沿ってさまざまな種類の果実の木が植えられている。
「鹿でしょ、それとイノシシ。本当にたくさん食べられていますよ。じゃがいもなんか小さいのだけを残して全部食べられたし、ゆりの根も掘られて。鹿は白菜が好きでしたね。キュウリやピーマンは食べないんですよ。よく知ってますよ。それでもね、ここに植えて育てて、種を採って、また種を蒔いて。もう3年目になりますけど、花の種もそうしています。」
桃栗3年、柿8年と言うように、すでに栗の木にはイガイガの実が付き、桃も今年の夏には実をつけたという。
そんな自然に近い生活を過ごす渡邉さんが新築した翌年にもうひとつチャレンジしたのが、太陽光発電システム。南面の大屋根には大きな太陽光発電パネルが載っていて、八ヶ岳の太陽の光をたっぷりと浴びている。年間日照時間が日本でも有数の長さを誇る八ヶ岳では、長坂町でも大規模な太陽光発電施設が稼動している。
「これも補助金を上手に利用させていただきました。国から40万円、北杜市から12万円、合わせて52万円出ました。」
設備と工事費で約300万円。さらに余剰電力は売電することにより、毎月使用料よりも売電料の方が多く、今年の7月には1万9千円くらい売電し、使用料が3千円くらいだったので、毎月1万6千円くらい収入があり、10年も経てば設備費は回収できるという計算になる。
「今問題になっている原発もね、もともとあまり好きじゃなかったのもありましたね。でも今から2年前でしょ。まさか原発がこんなことになるとは予想もしていなかったけど、これからは何となく自然エネルギーという流れの方がいいのかなと思って、これもオンナの勘ですよ。それに、ここにいると贅沢はやめようっていう気持ちになるんですよ。野菜を自分で作って食べることを経験すると、やっぱり何でもモノを大切するようになります。だから買物もムダな物は買わなくなりました。ストーブも薪ではなくて灯油にしていますけど、冬でも床暖房だけで充分暖かいので、驚くほどは灯油も使いません。」
まだまだこれからも発展する八ヶ岳スタイル。
「3月の地震の時も12日に長野県で起きた余震の方がここでは大きかったですね。でも震度3だったんですけど、神奈川で感じる震度3に比べるとこちらの方が揺れは少なかったような気がしますね。ログハウスは作りがしっかりしているのか、八ヶ岳は地盤が硬いのかは分かりませんが、意外と怖いという感じは小さかったですね。」
平屋の2LDKだが、親戚の甥っ子たちが遊びに来ても充分な広さ。彼らが大きくなったら、広いテラスの半分くらいに増築しようかというアイデアも膨らみ始めている。それにしても、今の住まいはテラスの広さが魅力的。目の前にはすぐに雑木林の緑が広がり、小川のせせらぎも聞こえてくる。
「きれいな水のあるところに住みたかったんですよ。千葉県の銚子に暮らしている親戚がいるんですけど、ここに来ると、海からの強い風や台風からの脅威がないので、それだけでも安心すると言いますね。海が好きか、山が好きかって言うけど、私はずっと山の生活が好きでした。」
30年前から八ヶ岳に通うようになり、貸別荘の利用から土地の購入。そして貸別荘オーナーからログハウスの新築へ。少しずつ夢のカタチに近づき、そして定年と同時に半分は八ヶ岳の生活を満喫する。そんな渡邉さんの八ヶ岳スタイルは、これからもまだまだ魅力的なものになっていくように思えます。
(この記事は2011年のインタビューです)