計画通りに移住完了。これから初めての冬を迎えます。八ヶ岳スタイル20号
八ヶ岳スタイル20号 細萱賢・美知子様ご夫妻
取材の日、この夏にしては珍しく朝から雨だった。八ヶ岳も南アルプスも、富士山も見えないなぁ、撮影はどうしようか、などと悩みながらカメラマンと稲久保にある細萱邸を目指す。
稲久保Ⅰ街区は販売開始から11年になる分譲地で、自然の木立もほどよく茂り、眺望のよさも人気のエリア。緩やかな坂を登ると、その一角に細萱さんのお宅は佇んでいる。
今は毎日草取りと薪づくりが仕事です。
訪ねて最初に印象的だったのが、草のない庭。夏の終わりといえ、まだ周囲は草がたっぷりの季節。きれいに草とりのされた庭は、他の区画とは明らかに異なる。建物も築6年とは思えないほどきれいなコンディション。
「今の季節は草とり、薪割りがメインの仕事かな。ホント、毎日することに追われていますよ。失業しませんね。ここに来てからは。」今年の6月に完全移住をしたばかりの細萱さん夫妻、ご主人は63歳になる。ここで初めての夏を過ごし、これからは本格的な冬を迎える。
「と言っても今までも真冬に何度も来ていますからね、不安はもうないですよ。」
夏は快適そのもので、極楽だったと言う。
「エアコンなしで過ごせるだけでも幸せでしょう。それに夜もぐっすり眠れるし。扇風機もありますけど使ったのは3日くらいかな。」
冬になれば、家の周りの木々の葉が落ち、八ヶ岳や南アルプスが見えるようになり、夏とは違った魅力が現れてくる。
「そんな季節ごとにはっきりした表情があるのが、ここの魅力ですね。」
テラスの前に大きな木が1本あったが、洗濯物が乾きにくいという奥様の要望で、伐採した。その木で薪作りをするのが、ご主人の仕事。
「この建物を建てるために切った木と、テラスの前にあった木で薪を作ってるんですけど、これだけあれば3年は持つでしょうね。大事な薪はテラスの下だけでは収まらないので、新しく薪小屋も作りましたよ。だって、これだけの薪を買ったら大変でしょう。大きなFFストーブもあるけど、ほとんど使っていないので、薪は大切な燃料。まさか自分でもこんなに薪作りをするなんて思ってませんでしたけどね。」
草とりは奥様の、薪づくりはご主人の仕事。ストレス解消にもなるし、ダイエット効果も大きいという。
「僕がアッシー君をやるから」という約束で、この地に移住。
実は、細萱さんがこの土地を買ったのは、もう11年前。大手プラント会社に勤務をしていた51歳の時。そして6年前、57歳の時にHONKAログを新築。
「50歳を過ぎた頃から、定年後のことを考えるようになりましたね、自然と。家内とも話をしてみたら、意外にも同じ考えだったので、別荘地を探し始めたんですよ。」
ご自宅は埼玉県春日部市。ご主人は安曇野の出身で、奥様は船橋育ち。
「私は次男坊だったので、東京に出て、自分で仕事を探して、家を建てて、子供も育てて、全部自分で決めて自分でやり遂げなくてはいかなかった。逆に言えば、好きに生きることができたんですけどね。」
奥さんにしてみると「会社勤めの時代は本当に真面目な仕事人間でしたよ。帰りは毎日深夜になるし、朝は早いし、家にいる時間はほとんどなかった。」という典型的な仕事人間。
「会社の仕事ですからね、大変ですよ。管理職になると余計にいろいろなことに気を遣うし。ストレスも溜まりましたね。そんな人生だったので、定年後は好きに暮らしたいという思いが余計に強くなったんですかね。」
二人の息子さんがいる細萱さん。子育ては奥様任せだったという。二人の息子さんにはすでにお子さんがそれぞれおり、お孫さんは併せて3人。子育てもひと段落ついた51歳の時、安曇野を始め、那須やあちこちの別荘地を見て回った細萱さんは、初めて八ヶ岳に来た時に、この稲久保を案内され、その時に「あっ、ここだな」と直感的に思い、ほとんど衝動的に即決してしまった。
「いろいろ見たんですよ。でも、あまりにも森の中過ぎて不便なところや賑やかな場所が多くて、ほどよい環境のところがなかなかなかったんですね。そんな時、八ヶ岳を紹介されて来てみたら、生活環境も問題ないし、自然環境のバランスがとてもほどよくて。しかも3月のその日、初めて八ヶ岳に来た日がとても良いお天気で、富士山、甲斐駒ケ岳、八ヶ岳、みんなきれいに見えたのが感動的でした。」
ちょうどその頃、団塊世代の新たな人生の提案という切り口で、テレビ番組や雑誌でも田舎暮らしをよく紹介していて、定年後は田舎暮らしがブームのようになっていた。細萱さんも土地を購入後、どんな田舎暮らしをしようか奥様と夢を語り合いながら、ようやく6年後に新築。
「会社に一時退職金支給制度というのがあり、それで建てたんですよ。本当に恵まれていました。」
奥様が普段クルマの運転をしないということもあり、日常生活への不安も多少はあったが、「僕がアッシー君をするから大丈夫。」というひと言で奥様も安心して移住計画を暖め続けてきた。
「うちの場合、家内がすんなり賛成してくれたので、移住計画もスムースにいきました。自分が考えていたことを分かっていてくれたみたいですね。感謝していますよ。