今から来年春の定年が待ち遠しい、大貫様ご夫妻。八ヶ岳スタイル15号
手作りが好きでね。庭にブランコや燻製用のストーブまで。
新しくなった大貫様邸にお邪魔すると、お手入れの行き届いた庭の美しさがまず目に映える。ちょうど緑のきれいなシーズンということもあったが、芝もきれいに刈られ、もうすでにここに定住されているくらい見事なお庭。
「ここに来ると、暇がないくらいやることがあるんですよ。庭いじりもそうですけどね、ホント、忙しい。だから心地よい疲れで夜は早々と床に入って、ぐっすり眠れるんでしょうけどね。」
庭にはお孫さんたちが来たら遊べるように、ブランコがあり、テラスにはいつでもBBQが楽しめるように薪を燃やして使うオーブンもある。 「ここでね、燻製を作るんですよ。ここなら気にせず煙を出せますからね。」と、ピザを焼いたり、気ままに楽しいひと時を過ごす。 日除け用のオーニングも後から取り付け、これからの季節は第二のテラス・リビングという貴重なスペース。そのテラスも、ペンキがきれいに塗られたばかりで、ペンキ塗りもご主人の大事な仕事。 「薪小屋と生ごみを入れるコンポスト、それに物置もきれいに外観デザインとコーディネートしたんですよ。その方がきれいでしょ。ほとんどが手作りです。庭で野菜を作ったり、木や花を植えたり、とにかく仕事には事欠きませんね。次から次へとやることが出てくる。それが楽しみなんですけどね。ペンキも毎年塗らないと傷みが早くなるでしょ。」
芝生のグリーンが鮮やかな庭には、オカノリ、リンゴ、ブルーベリー、ジューンベリーなど高原特有の樹種がきれいに植えられ、この季節はちょっと遅めのバラやキャットミントと呼ばれる紫色のハーブなど、夏を彩る花々もきれいに咲きほころび、デザインガーデンという雰囲気ができあがっている。 「雑草もよく育ちますけど、ほとんどの花や木は水やりをしなくても元気なんです。夜露なのか、やっぱり自然なんですよね。寒暖の差があるせいか、野菜もよくできますね。それに、庭にいるといろいろな種類の鳥たちもやってくるので、飽きることはないですね。」
雑誌「Be-Pal」が 先生だった、青春時代。
ポスト団塊世代の大貫さん。より自由な雰囲気な空気に包まれた青春時代は、これからの新しいライフスタイルを誰もが夢見るような時代だった。アメリカンライフスタイルやカルチャーを日本に持ち込んだ雑誌「POPEYE」やアウトドアスタイルの先駆的雑誌「Be-Pal」も、いつしか大貫さんの愛読書になったという。
「ログハウスに暮らし、薪ストーブの前でのんびりと時間を過ごす。そんなライフスタイルが憧れだったんですよ。Be-Palもよく読みましたけど、都会育ちということもあったせいか、アウトドア的なライフスタイルがこれからの生き方かなあ、なんて思うようになりましたね。」
ちょうど八ヶ岳のリゾートホテル「リゾナーレ」にも、Be-Palの「休日研究所」があり、八ヶ岳というフィールドはアウトドアスタイルには最適な環境であることも、ここに定住しようという気持ちを後押ししてくれたのかもしれない。
「今では、節電の影響もありますけど、スローライフとかスマートスタイルとかが注目されていますよね。まさかこんな時代になるとは思わなかったけど、自然の中に身を置いて、自然のリズムに合わせて暮らす、そんな生活が豊かなんじゃないかと誰もが思い始めてきたわけですよね。それに、薪はCO2を出さない燃料でしょう。すでに薪の中にCO2が固定化されているから。もちろん薪も買っていますが、ここに暮らすようになると、4月に買えば冬の半分くらいの値段で買えるということも分かってくる。これも生活の知恵ですね。」
今まで無制限に電気も使い、快適さ、便利さという魔法にかけられたような都市型生活がよしとされてきたが、東日本大震災以降、そんな生活でいいのだろうか、もっと質素倹約な生活に戻すべきではないだろうかと、多くの人が実感するようになってきた。
「別に不便でもないし、かえって身体も健康になったし、気持ちもいい。働くのは確かに都会の方が機会に恵まれていますけど、第二の人生を考えるなら、こっちの方が断然いいですよ。」
職場の仲間にも、何となく田舎暮らしに憧れている人も多いという。そういう人には、「欲しければ思い切って踏み出すこと」だとアドバイスすると言う。
「あとは、後から付いてくるってよく言うじゃないですか。まったくその通りで、ここは何も不自由はないし、いいことばかりです。人間は本来こんな環境に身を置いて暮らした方がいいと実感する毎日です。犬もここに来ると元気になるし、川崎にいると、八ヶ岳に行きたそうにしていますよ。今朝も自家製の沢庵を食べましたが、こんな生活もいいなって、思いますよ。」
すでに定住生活のスタイルがすっかり身に付いた感じの大貫様ご夫妻。あと半年後の春が待ち遠しい夏です。
(この記事は2011年のインタビューです)