若きアスリート夫妻が始めた、田舎の暮らし。八ヶ岳スタイル21号
2年間の週末婚で、一人でも充分生きていける自信が持てた。
2年間に渡る週末婚で、奥様もすっかり田舎の住人としてのスキルが身についた。最初はストーブに火を点けるのも大変で、ご主人に電話で教わりながらだったという。アウトドアが好きでキャンプなどで火起こしの経験のあるご主人は、火が燃える仕組みさえ分かれば電話でも教えられると言う。二人とも寒いところで生まれ育ったこともあり、寒さはあまり気にならない。もちろんエアコン無しで過ごせる夏は快適だが、どちらかと言うと夏よりも冬の方が好きだとのこと。
50mの直線トラックもそうだが、住まいに入ると玄関からまっすぐ土間が延びるのがこの家の特長。基本図面はご主人自らが描いて、ツーバイフォーやログでは難しい構造なので、在来工法で建てられた。「壁や間仕切りのない、ワンルームのようなひとつの空間にしたかった」という住まいは、全体が見渡せるシンプルな空間に包まれている。それとこの家の一番の特長は土間。玄関からまっすぐキッチンを通って裏口へと抜けられる、まるで京都の町家を思い起こさせるような空間。キッチンも無垢の木の天板にシンクとIHクッキングヒーターを付けたとてもシンプルな構造だ。
「長く住む家であるということ。ここだからこそできる家を建てたい。そんな思いで作り上げた家です。歳をとると段差のない家がいいとよく言われますよね。ユニバーサルデザインの家とか。でも、私は歳をとるほど段差は必要だと思います。本当のユニバーサルって、誰でも使いやすいってことでしょ。楽であればいいってことじゃないと思います。長く使える、その家に暮らす人を育てる。そんなデザインだと思うんですよね。」
「山ん家(やまんち)」と表札に書かれている山本邸には、横浜のころの陸上やスキー仲間たちの子どもも一緒に訪ねてくる。そうすると、家の真ん中にある階段に自然と座る。
「最初は怖がっていたけど、居心地がいいんでしょうね、みんなここに座ります。」
冬でも晴れの日は差し込む太陽の光で十分暖かく、夜も薪ストーブだけで暖は足りる。ストーブの上に鉄鍋を置いておけば、コトコト煮るだけの手抜き料理も簡単にできる。ご近所さんから大根などの素材をいただいたら、出汁だけで美味しく炊いた煮大根をお返しする、そんな素材交流を日常的に行う生活がすっかり定着した山本さんご夫妻。さらなる「野望」を抱いて、また新しい年を迎えようとしています。
(この記事は2013年のインタビューです)